統合失調症その1・症状と治療法編

統合失調症 職場での合理的配慮 Uncategorized
  1. はじめに

こんにちは、ゼミ長です。今回のゼミでは、2回に渡って統合失調症の紹介をいたします。1回目は症状と治療編といたしまして、統合失調症の歴史、主な症状と治療法について解説いたします。2回目は、職場での悩みと配慮編を紹介いたします。

精神病のうち、うつ病などの気分障害に次いで統合失調症は罹患者が多い病気です。一般的には、統合失調症という言葉は知っていても内容までは知られていないと思います。ですから、このゼミを機会に、知っていただければ幸いです。最後に記載しています参考文献をもとに統合失調症について紹介いたします。

  1. 統合失調症の歴史

統合失調症の歴史は古代から遡ります。19世紀には、ドイツの精神科医エミール・クレペリンが「早発性痴ほう症」として初めて概念化しました。彼は症状のパターンと経過を研究し、病理学的に説明を試みたのです。その後、スイスのブロイラーが「精神分裂症」の用語を提唱し、感情障害や思考障害を含む症状を記述した。

日本でも1937年から「精神分裂症」という呼び名で呼ばれていましたが、2002年に日本精神神経学会が「統合失調症」に変更しました。「精神を分裂する病」という事で、人格否定的であり患者に告知しづらいという理由から変更いたしました。

  1. 統合失調症の症状と経過

統合失調症の原因は充分に明らかにされておらず、単一の疾患であることさえも疑わしい(金 2015)とされています。そのようにこの病気の原因がまだ未確定であっても、現在では2つの仮説が有力視されています。

 

1つ目は、人の思考は脳神経と脳神経を情報伝達物質が伝達することによって起きます。そのうちの1つにドーパミンがあり、覚醒剤などの成分でもあるアンフェタミン類などの物質により、ドーパミンが過剰に分泌され幻覚、幻聴や妄想が生じるというドーパミン仮説があります。

 

2つ目は、ストレス‐脆弱性モデルです。これは、本人の遺伝と環境が発症に影響しているという考え方です。産前産後のウィルスや栄養失調などの影響により、脳神経がストレスに対して弱くなるという考え方があります。また合わせて本人が経験した心理的経験が、自我意識を破壊して発病するという考え方です。

 

では、統合失調症の主な症状について説明します。統合失調症の症状は、幻覚、妄想、連合弛緩などの陽性症状とうつ症状、感情鈍化などの陰性症状の2つの症状があります。但し、陽性症状のうち幻覚、妄想は人によっては見られないこともあります。

ブロイラーは、統合失調症の中で必ず発症する症状として連合弛緩(思考のまとまりのなさ)、感情障害(感情の鈍麻、異常な敏感さなど)、自閉(自分の殻に閉じこもる)、両価性(同一の対象に相反する感情を抱く)をあげています。

一方、ドイツのシュナイダーは、思考化声、対話形式の幻聴など特異的な症状である一級症状と、抑うつ症状などの特異的であっても他の病気にもみられる二級症状に区別しました。

 

次に、統合失調症の経過の様子を説明いたします。統合失調症は、前駆期・急性期・慢性期の3つの期間に区別されます。

まず、前駆期について説明いたします。前駆期は、統合失調症の症状が本格的になる前の期間で、数週間から数年にわたるとされています。主な症状は、抑うつ気分、集中困難、易疲労性、睡眠障害などが起きます。そのため、職場では作業効率が落ちることや休みや遅刻が増えてくることがあります。

 

前駆期が進行して陽性症状が出始める時期が急性期です。この時期の主な特徴的症状は、まず妄想体験です。当初は天変地異が起きるなど、不安や緊張が高まるといったものから、徐々に確信の度合いが高まっていき体系的な物語になっていきます。この妄想体験の中で、「誰かに攻撃された」といった被害妄想が圧倒的に多いです。

自我意識の障害も統合失調症の特徴的な症状です。思考面で自他の区別がつかなくなり、常軌を逸した言動や自傷他害の原因にもなります。例としては、思考察知(自分の考えを相手に知られてしまう)・思考伝播(自分の考えが広く知れ渡ってしまう)・思考吹入(自分の中に考えが吹き込まれる)・思考奪取(考えが抜き取られる)という症状です。

感情面での障害としては、他人との共感性が薄れ融通が利かないなど人間関係に支障が生じやすくなります。

 

最後に、急性期での症状が消退する状態を寛解状態と呼びます。慢性期で寛解状態になります。人によっては、妄想などの症状が一部残っていますが急性期ほどの不安さや切迫感が無く、本人も妄想を抱いていることを認識している「二重見当識」の状態もあります。

しかしながら、統合失調症は陽性症状が重くなってしまう再燃が起きやすい病気です。この再燃と良くなっていく軽快を繰り返していくうちに、抑うつ症状などの陰性症状が重くなっていくこともこの病気の特徴です。そのため、寛解したからといって適切な治療を受けなければ、より重症化してしまう可能性があります。

  1. 統合失調症の治療方法

統合失調症の治療方法は、抗精神薬による薬物療法と脳に電気ショックを与える身体療法があります。身体療法である電気けいれん療法では、頭部に100Ⅴの電流を4~5秒間流すという方法です。統合失調症患者が、服薬ができない場合などに用いられます。

次に、薬物療法について説明します。1952年にフランスの精神科医が、麻酔薬として開発されていたクロルプロマジンを統合失調症患者に投薬し、幻覚や妄想の消退が見られたなどの効果があったことで、クロルプロマジンが注目を抗精神薬として注目を集めました。このクロルプロマジンは、統合失調症の陽性症状を抑えるばかりではなく、再燃を軽減させることもわかっています。

しかし抗精神薬は、脳の神経伝達物質であるドーパミンの経路を遮断する作用があります。 そのため、錐体外路症状(振戦・固縮・無動など)と言われるパーキンソン病様の症状、アカシジア(居ても立っても居られない運動不穏状態)やジストニア(頸部のひきつりや眼球の上転)などの副作用があります。そこで最近では、これらの副作用を軽減させる非定型抗精神病薬などが使用されています。しかし人によっては、非定型抗精神病薬であっても服薬当初は、立ち眩み・眠気・便秘・口渇などの副作用が現れます。

  1. まとめ

今回のゼミを最後まで参加下さり、誠にありがとうございました。統合失調症は、精神分裂症と言われた時期があり、未だに何をするかわからないなどのレッテルを貼られています。しかし、統合失調症は薬物療法によって妄想や幻覚などの症状を軽減することができます。但し、現在治療を行っている人が自己判断で服薬を中断したりすることは、症状を悪化させてしまう原因になります。治療については医師との相談を心掛けてください。

次回は、働いている統合失調症のひとに焦点を当て、統合失調症のひととの職場での悩みと配慮についてゼミを行います。

参考文献

石丸昌彦・広瀬宏之(2016)『新訂 精神医学特論』放送大学教育振興会pp27₋59

武井茂樹(2011)『よくわかる 精神医学の基本としくみ』秀和システムpp162₋182

佐藤光源(2015)「統合失調症について~精神分裂症と何が変わったのか~」日本

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